14. 透析時間の予測-4時間か4時間半か?
筆者の通院している透析病院では,透析時間は通常4時間か4時間半のどちらかを選ぶ。例外的に5時間になることもままある。わずか30分の延長といえどもストレスが余分にたまるので,透析時間は少しでも短くしたいと思う。透析日の前日や透析日当日の朝には,透析時間は4時間なのか4時間半なのか予測したくなる。
筆者の場合,透析日は火・木・土曜日なので,土曜日から2日間空く火曜日の透析時間は,体重が増えるので,通常4時半である。木曜日の透析時間は,4時間が理想的だが,火曜日の透析の除水量がドライウェイト近くまで至らずに残りがあるため,しばしば4時間半になることが多い。土曜日の透析時間は大抵の場合,4時間になる。
今年のお正月休み明けの週の場合,正月に飲食が多かったせいで,例外的に,火曜日は4時間半,木曜日は5時間,土曜日は4時間半という普段とは異なる状況であった。
透析時間は,透析日当日,病院で透析直前にはかる「透析前体重」が,「ドライウェイト」よりどの程度大きいかで決まる。
病院では,体重は着衣のまま計測されるので,「透析前体重」や「ドライウェイト」には,着衣(下着,パジャマ,スリッパ,腕時計)の重量の補正が含まれている。これを「衣類重量補正」と呼ぶことにする。冬はパジャマが厚手で重く,衣類重量補正は1.1kg程度になる。
透析では,透析前体重がドライウェイに至るまで脱水するのが原則である。
透析前体重がドライウェイトより増えている量を「体重増加」と呼ぶことにする。
体重増加=透析前体重-ドライウェイト
体重増加が2.8kg以下なら透析時間は4時間になり,4時間より短くなることはない。
体重増加が2.8~3.2kgの場合には透析時間は4.5時間になる。
ちなみに,「透析患者の体重増加量は,体重の5%以内」とされている。体重が60kgの場合,その量は3kgである。
体重増加が3.2kgを超える場合,これは透析後に体重がドライウェイトに達しない場合になるが,体内に余分な水分が残ることになるが,これは次回の透析時に除水される。体重が1週間内にドライウェイトまで引けそうにないと予想される場合には,透析は5時間に延長されることがある。このようなことは,筆者の場合,年に数回程度である。
日・月曜日の2日間明けの火曜日の透析日や旅行や会食の翌日の透析日のように,体重増加が2.8kgを超える日の場合には,透析時間のいかんにかかわらず,ドライウェイトよりさらに100g脱水する場合もある。これは,透析開始直後の「脱血」による。脱血とは,透析開始時に,ダイアライザーに注入しておいた水を捨てることである。すると,透析後の体重はドライウェイトよるさらに100g引かれる。この脱血によってやっと体重がドライウェイトになる透析日も多い。
ダイアライザーによる除水には限界がある。筆者の場合,除水速度が0.7L/時間,すなわち4時間で2.8L,4時間半で3.15L程度の除水が限界である。除水速度をこれより大きくすると,「足の釣り」や血圧低下などが起きてしまうことが多い。1回の透析中に,除水速度を調整するのは,看護師さんたちの腕の見せ所だ。
透析当日の自宅での起床直後の体重を「朝体重」と呼ぶことにする。この朝体重を見て,今日の透析時間は4時間で済むか4時間半になるかを判断する。この「朝体重」と病院で測る「透析前体重」との関係は,次の式になる。
透析前体重=朝体重+当日朝食事(飲水量含む)-当日朝排便量+衣類重量補正
筆者の場合,当日朝の食事量(飲水量含む)は通例,パン,小サラダ,ヨーグルト少々,フルーツ少々,コーヒー,野菜ジュースなどで,約0.45kg程度である(0.5kgとしておく)。排便量については,01.kg~0.2kg程度と思われるが,排便のない日もあるので,平均0.1kgとしておけばよいだろう。ここで,小便は全くでないので便は大便のみである。筆者は,毎朝,栄養剤を1本(100g)飲むが,これは排便量0.1kgと相殺されるであろう。すると冬場の場合,上の式は,次のようになる。
透析前体重=朝体重+朝食0.50kg+衣類補正値1.1kg
≒朝体重+1.6kg
透析時間は,上に述べたように,「透析前体重がドライウェイトより同程度大きいか」できまる。以下に,透析日当日の朝の予測と透析日前日における予測にわけて考える。
1)透析日当日,朝体重を測った際に当日の透析時間を予測するには?
この場合は,上の式にしたがって,朝体重+1.6kgがドライウェイトより2.8kg以下なら透析時間は4時間,それ以上なら4時間半となる。前者の場合,朝体重の値が小さかったからといって,透析時間が3時間半とか短縮されることはなく,4時間のままである。
2)透析日前日に翌日の透析時間を予測するには?
透析日前日に明日の透析時間を予測するには,翌日(透析日当日)の朝体重がまだ不明なので,翌日の朝体重が,前日の朝体重より1日でどのくらい増えるか(1日の体重増加)を予測しなければならない。
1日の体重増加(前日朝から当日朝まで)を評価してみよう。具体的には,水→木,金→土曜日の場合である。
2025年10月~12月間の曜日別朝体重月間平均値を表14-1に示す。この期間は,正月のような多食・多飲食がほとんど無かった期間であった。
表14-1 曜日別朝体重月間平均値(2025.10月~12月)
| 表14-1 曜日別朝体重月間平均値(2025.10月~12月) (単位:kg) | |||||||
| 2025年 | 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
| 10月 | 59.15 | 60.77 | 61.94 | 59.72 | 60.91 | 59.29 | 60.46 |
| 11月 | 59.66 | 60.98 | 62.44 | 59.95 | 61.35 | 59.45 | 60.73 |
| 12月 | 59.46 | 60.83 | 61.43 | 59.91 | 60.94 | 59.38 | 60.94 |
| 3ヶ月平均 | 59.42 | 60.86 | 61.94 | 59.86 | 61.07 | 59.37 | 60.71 |
表14-1に示されているように透析日翌日の非透析日(水,金)では,朝体重は透析によって透析日の朝体重よりも低くなっている。
透析日・非透析日にかかわらず,1日の食事・飲水量は,食事分については旅行などの日を除いた平均的な日では,朝食450g, 昼食350g,夕食400gで計1200g程度である。また,飲水量は同じく1日に1000g程度で,食事量と飲水量の合計は2200g程度となる。したがって,体重は1日で2.2kg増えそうだが,不感蒸泄分を考慮しなければならない。
筆者の場合,8時間睡眠で,起床直後測定体重(朝体重)は前日の寝前測定体重より200g程度少なくなる。これは就寝中の不感蒸泄量と考えられる。すなわち,不感蒸泄量平均は200g/8時間であろう。1日24時間では,3倍の600gとなる。しかし,日中は活動しているので,1日の不感蒸泄量は600gよりもっと多いであろう。不感蒸泄は一般に0.8~1.2Lとされているので,日中の活動を加味して(運動はしていない),1日の不感蒸泄量を中央値1.0kg程度としておく。すると,体重は1日で2.2kg増えそうだが,不感蒸泄分1.0kgを引いて1.2kgの増加にとどまる。もちろん,水を多めに飲んだり多食すると,体重増はたちまち1.2kgを超えてしまうことは言うまでもない。
表14-2 曜日別朝体重月間平均値の前日からの増加分(2025.10月~12月)
| 表14-2 曜日別朝体重月間平均値の前日からの増加分 (2025.10月~12月)(単位:kg) | ||||||||
| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 平均 | |
| 前日からの 増加分 | -1.29 | 1.44 | 1.08 | -2.08 | 1.21 | -1.70 | 1.34 | 0.00 |
| 同上 (透析日) | 1.08 | 1.21 | 1.34 | 3日分平均 1.21 | ||||
| 同上 (非透析日) | -1.29 | 1.44 (日月計0.15) | -2.08 | -1.70 | 3日分平均 -1.21 | |||
表14-2は,表14-1から作成した,「曜日別朝体重月間平均値の前日からの増加分」の表である。これを見ると,非透析日では,平均値の増加分が1.21kgとなっていて,記録の上からも,通常の1日の体重増加は非透析日で1.2kg程度増加するという推測はほぼ正しいことがわかる。すなわち,食事・飲水を最低限に近く抑えこんでいれば,今朝の朝体重に,1日の体重増加分1.2kgを加えた値が,おおむね明日の朝体重になる。
透析日当日の朝体重(予測値)=前日の朝体重+1日の体重増加分1.2kg
翌日の透析前体重は,
翌日の透析前体重=前日の朝体重+1日の増加分1.2kg+明日の朝食量0.5kg
+衣類+重量補正1.1kg = 前日の朝体重+2.8kg
と予想される。これをドライウェイトと比較すればよい。
翌日の透析前体重を具体的な数字で予測してみる。
表14-1から,非透析日では朝体重は平均59.89kgであるから,これを60.0kgとする。
ドライウェイトは,たびたび変更されるが,現在のところ,60.2kgである。これらを用いて,透析日である翌日(木・土曜日)の透析日の透析前体重を予測すると,
翌日の透析前体重=前日朝体重60.0+1日の体重増加量1.2
+朝食0.5+衣類重量補正1.1 = 62.8(kg)
となり,透析前体重―DWT=62.8-60.2=2.6(kg)となる。
透析では,透析中に空腹になるので,100g程度のお菓子を食す。また,筆者の場合,透析終了時に血圧が下がるので,ダイアライザーから体内に血液を戻すときの補液(水,通常は350mL)を0.1L(0.1kg)追加して,これを防ぐ。
これらを考慮すると,透析前体重のドライウェイトとの差は2.8kg程度となって,この値は4時間透析の場合のぎりぎりの値となる。これでかろうじて4時間であるから,少しでも多食・多飲すると透析時間は4時間半になってしまう。
火曜日の透析は,土曜日透析から2日空くため,火曜の朝体重増加は表14-2に示されているように日・月合わせて2.5kg以上になり(透析前体重増加は2.5+1.6=4.1以上),透析時間も4時間半が通例である。しかも,除水できなかった水分も0.3L~1.0L程度残ることが多い。
表14-2に示されているように,朝体重の増加量の1週間平均は0になっている。これは, 1週間の体重が増えなかったことを物語っている。実際の体重増加分が透析による脱水量と相殺したためである。
前日からの朝体重増加分(透析日)では,3日分の平均が1.21kgである。
前日からの朝体重増加分(非透析日)では,日曜日の値が-1.29kg,月曜日の値が1.44kgであるが,透析日の3日分平均に合わせて(透析日と非透析日が1日おきであるように考えなおして),これを2日間まとめて月曜日が1.44-1.29=0.15と考え,3日分平均に直して考えると-1.21kgとなり,両者の合計は0となる。
体重増加を1.2kg以下にするのは,かなり努力がいる。少し塩分の強い食物をとると,塩分吸着剤を飲んではいるが,やはり喉がかわき,1日の飲水量がたちまち1.5L以上になることが多い。旅行や宴会のあった日は1日の飲水量は,気を付けていても2.0Lになった日もある。ちなみに,成人の接種水分量は体重が60kgの人の場合,2.1L程度らしいので,2.0Lの飲水量は健常な成人並みの飲水量であることになる。すると体重増加は2.8kgを超えてしまう。こうした日には,透析病院の医師の先生から,飲みすぎ,食べ過ぎについて注意をうける。
慢性腎臓病患者は,1回の透析でできるだけドライウェイトになるように努力が求められているのだ。できるだけ小食・少飲を心掛けることにつきる。時々,思い切り食べたりビールをたっぷり飲んだりしたいという思いに駆られることがあり,それができず,悲しく思う。
(206年1月25日記)